第4章 自律神経失調症・うつ病の対策 ストレス別
構造的ストレスへの対策

構造的ストレスへの対策 「力を抜く」と貼り紙をする

 自律神経失調症の方には、いくつかの共通点があります。
その一つが「体に力が入る癖がある」ということです。

 

 あなたは今、肩に力が入っていませんか? 自律神経失調症の方の多くは、体に力が入っているため、体のゆがみを起こします。
これが動く神経を過剰に働かせる原因になります。
動く神経が過剰に働くとさらに体に力が入るという悪循環になってしまっています。
このままでは自律神経失調症は改善されません。
このような方はできるだけ体の力を抜くことを意識してみましょう。

 

 といっても、通常は意識してもすぐに忘れてしまいます。
そこで、紙に「力を抜く」と書いて、いろいろなところに貼ってみてください。

 

 寝室の壁、台所、リビング、仕事場の場合は、パソコン画面の横にでも付箋に書いて貼ってみてください。
そしてそれを見るたびに、力が入っているか確認して、力が入っているようなら力を抜きましょう。
こうして力を入れる癖を少しずつ直していきましょう。

 

 なぜこのようなことをするかといいますと、実は通常、人間は物事を習得するまで四つの段階を通るからです。

 

  • 1段階目 無意識的無能
  • 2段階目 意識的無能
  • 3段階目 意識的有能
  • 4段階目 無意識的有能

 

 例えば車の運転を思い出してください。
子どもの頃は親が運転している姿を見て、

 「何だか簡単そう。自分でも運転ができるんじゃないか」

 と思いませんでしたか?
これは自分が運転できる能力がないことに気づいていない状態・つまり1段階目です。
自分が無能であることを意識していない(わかっていない)状態ですね。

 

 そして大人になり、自動車教習所に行きます。
そこで自分がまともに運転できないことに初めて気づき2段階目に成長します。
無能であることを意識して(わかって)いるのです。

 

 そして教習所で運転を習い、仮免あたりから少しずつ運転がうまくなってきます。
しかし、この時は周囲に目を配り、次は右に曲がるからウインカーを出して、あのあたりでハンドルを切って…とかなり意識して運転しています。
教官が横から口を出そうものなら「うるさい!」といいたくなるくらいです。
これが3段階目の意識的に有能である状態ですね。

 

 さらに成長すると、4段階目の無意識的有能になります。
この状態は、無意識で車の運転ができる状態です。
助手席の人と楽しく話をしていても、車の運転に支障はありません。
いちいち次にどんな操作をするかを考えなくても、体が無意識に動いてしまいます。
あの自動車教習所の教官に見せたいぐらいです。

 

 さて、この例を「体の力を抜く」ということに当てはめてみましょう。
多くの自律神経失調症やうつ病の方は、体の力が抜けていないことに気づいていませ ん。
つまり1段階目の無意識的無能なのです。

 そのため、まずは力が抜けていない自分に気づかなければなりません。
ですから貼り紙をするのです。
貼り紙が目に入ったら体に力が入っているかを確認して、力が入っていれば力を抜けばいいのです。
これでもう3段階まで成長ですね。

 

 車の運転のように、何回も運転すれば無意識で運転できるように、これも何回も練習すれば無意識に体の力が抜けるようになります。
さすがに強烈なストレス時には無理かもしれませんが、普段は力が入ることは少なくなります。
ぜひ今すぐにでもチャレンジしてみてください。
私の患者さんでもこれでかなり体の緊張がとれた人がいます。