うつ病・自律神経失調症 治る人 治らない人
序章 自律神経失調症・うつ病とはどんな病気かを知ろう

それはある日突然始まった

 今から1年前のある日……。
それは寝ている時に突然始まったのです。

 

 「ドンドンドン!」

 

 胸の奥から心臓が叩かれるような感覚と息苦しさが、突然私を襲ったのです。
いきなり心臓がバクバクしたかと思うと、心臓をわしづかみされるように胸が締めつけられ……そして異常なほどの疲労感。

 

 「うう、何だこれは……」

 

 私はスポーツが好きで、健康だけには自信がありました。
そのためこの急激にバクバクと脈打つ心臓や、胸が締めつけられるような息苦しさに、いったい自分の体に何が起こっているのかがわかりませんでした。

 

 「このまま心臓が止まり、息ができなくなって死んでしまうのではないか……」

 

 実は、今ではうつ病や自律神経失調症の専門家である私も、1年前のこの時は、単なる当事者だったのです。
初めて症状が出た夜、私は不安で眠れませんでした。
そしてこんな症状が3日間も続くと、私は怖くなり仕事の合間をぬって仕事場近くの病院に駆け込みました。
「心臓病かもしれない」、そう思って病院で診察と検査を受けたのです。

 

 問診に次いで心電図などの検査を行いました。
しかし、結果は……

 

 「特に異常はないですね。安定剤でも出しておきましょう」でした。

 

 診察時の医師のこの言葉に私は「異常がないわけがないじゃないですか!」と思わず食ってかかりました。
すると「そうはいっても心電図には異常は見られませんのでねえ……ストレスじゃないですか?」と返答。

 

 「この医者はダメだ。きっとヤブ医者なんだ」。

 

 私はそう思い込み、違う病院でも検査をしてもらうことに決めました。
次の病院での検査では、心電図をとっている時に胸のバクバク感があったので、「これで何か見つかるかもしれない」という期待と不安をもって診察を待ちました。
しかし、「不整脈は多少ありますが、これくらいなら気にしなくてもいいですね」。
医師の答えは前回の医師とほとんど同じでした。

 

 「不整脈の原因は何でしょうか?」
このように聞いても目の前の医師は「狭心症でもないですし、原因はストレスでしょう。よくあることですよ」と答えただけでした。

 

 「こんなのがよくあるはずがない!何かあるはずだ」

 

 こう思って三つ目の病院でも検査を受けたのですが、当然ながらそこでも結果は同じでした。
その後も異常な疲労感は続き、うつ病状態になり、当時好きだったマラソンやスキーもまったくやる気がなくなってしまいました。

 

 自分が自律神経失調症やうつ病のようだとわかったのは、本で調べてからです。
とにかく病名らしきものはわかったのですから一歩は前進しました。
しかし私は、どうしたら治るのかがわからないままでした。
先ほどお伝えしましたように病院では「原因はストレスでしょう」といわれるだけでした。
そのため私は、自律神経失調症やうつ病のことを自分で調べてみることにしたのです。

 

 書店で自律神経失調症やうつ病の本を買いあさって読みまくりました。
しかし、いくら調べても自律神経失調症やうつ病になった時に具体的にどのようにしたらいいのかがよくわかりませんでした。

 

 次に私は、医学の専門書や文献などを調べることにしたのです。私は整体・カイロプラクティックの治療院を開業していました。
そのため、医学書等はある程度読み慣れてはいました。
そして試行錯誤して2年間、ついに自分の手で自分の自律神経失調症・うつ病を治したのです。
今ではこの経験を生かし、自律神経失調症やうつ病などを専門に整体やセラピーなどを行っています。

 

 最近、自律神経失調症・うつ病などを患う方が多くなってきました。
私は日々多くの患者さんを見てきて思うのですが、それらの患者さんは、自律神経のしくみを理解していないため、知らず知らずに病気になるような生活や生き方をしてしまっています。
そして病院で検査しても異常が見られないので、無意識に新種の病気か、もしくは不治の病にでもかかったのかと思い込み、恐怖感や不安感を感じることになるのです。
すると恐怖感や不安感が、ますます症状を悪化させてしまうのです。

 

 自分では理解できないことが起きている不安感。
ひょっとすると死んでしまうかもしれないという恐怖感。
一生、治らないのではないかという絶望感。

 

 実は、この「不安感」「恐怖感」「絶望感」といったものが、自律神経失調症やうつ病などの症状をさらに悪化させているのです。
ですから自律神経失調症やうつ病の方は、自律神経のしくみや働き、また、その特徴などを知らなければならないのです。
もしそれらを知らなければ、不安感や恐怖感をいたずらに感じることになり、症状の悪化へとつながってしまうのですね。

 

 作家であり哲学者でもあるラルフ・エマーソンは次のようにいっています。

 

 「恐怖はいつも無知から生じる」

 これは自律神経失調症やうつ病にも当てはまります。
何だかわからないから恐怖感や不安感が起こり、その恐怖感や不安感が症状を悪化させ、悪化した症状に、また恐怖や不安を感じるという悪循環に陥りやすくなります。
知ってしまえば大したことがないのようなことでも、知らないというだけで恐怖感や不安感が症状を悪化させてしまうのです。

 ですからまずは、本書で自律神経の働きやしくみを知っていただき、恐怖感や不安感を取り除いていただきたいと思います。
そしてその対策を知り、自分で自律神経を乱さない生活や自律神経の乱れを改善させる生活を送るようにしていただきたいと思います。
そうすれば、あなたの症状は今よりも大きく改善していくはずです。