更新日:2019.05.29
執 筆:整体師 田島健次
HSPの基本の考え方は、「生まれ持った気質が原因で敏感になる」ということです。
しかし、生まれ持った気質以外に「育った家庭環境で敏感になる」もいると、私は考えています。
先ほど触れましたが、愛着障害で神経過敏が起きている人は多いでしょう。
愛着形成が上手くいかなかったためストレス耐久度が低く、大きなストレスがあると「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」により、少しの刺激でも過剰に反応してしまう事もあります。
「PTSD」の症状までいかない場合も、「トラウマ」が潜在意識まで入っていると、自分では意識しなくても体にストレス反応が起きてしまうこともあるでしょう。
また、気質的なHSPがなく、愛着形成もあるにも関わらず、同じようにように敏感に感じやすくなる人もいると考えらえます。
それは、慢性的ストレス・過剰なストレスが続き心身共に疲労感が溜まり、自律神経の交感神経が優位になって常にエネルギーを使い過ぎている方です。
エネルギーを使い過ぎてしまうと生命の危機的状態に陥いるため、体を守るために小さな刺激でも反応して神経質になります。
それによって、何事も敏感に感じやすくなってしまうのです。
この3つの方の共通点は「刺激によってストレス反応が起きて、自律神経の交感神経が優位に働きすぎて副交感神経とのバランスが取れなくなり、体の症状まで発展してしまうこと」でしょう。
それでは、ストレスと自律神経の関係についてみて行きましょう。
生まれつきHSPの方は、刺激に対してストレスを強く感じます。
ストレスを強く感じると言うことは、ストレスホルモン(副腎皮質ホルモン)である「コルチゾール」が過剰に分泌されるということです。
コルチゾールには、ストレスが起きた時に自分の体を守る作用があります。
例えば、糖・タンパク質・脂質の分解促進・抗炎症作用・免疫抑制と、生きていくためにとても必要なホルモンです。
一過性のストレスでは、この様に良い反応が起こります。
しかし、慢性的なストレス状態になると過剰に分泌されてしまい、高血圧・胃潰瘍・糖尿病などにかかりやすくなってしまいます。
他には、コルチゾールには脳の海馬を萎縮させる作用があります。
海馬は短期記憶の場所なので、慢性的なストレス状態ですと、ケアレスミスや簡単な約束事などを忘れてしまう事があります。
「最近物忘れが多い」などの覚えがある方は、老化ではなくて慢性的なストレス状態かもしれません。
ストレスを感じた時に、体・脳の中ではどの様な反応をしているのでしょうか。
簡単に説明していきます。
ストレスがあると「脳の視床下部からCRF(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が放出され、下垂体を刺激してACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を放出し、副腎皮質から先ほどのストレスホルモンのコルチゾールが出る」という流れが、体の中で起きています。
すると同時に、自律神経の交感神経が興奮します。
ホルモンでは、アドレナリン・ノルアドレナリンが放出されます。
交感神経は、「戦うか、逃げるか(闘争か逃走)」の反応が起き、ストレスに対して生命を守るための防衛反応が起きます。
体では、脳や筋肉に一気に血液と酸素を送るために心臓がドキドキします。
心拍数が上がり、筋肉は闘争・逃走に備えて緊張、萎縮して瞳孔は開き、耳は少しの音でも過敏に反応して、鼻も匂いを過敏に捉える状態になります。
この様な反応は、生命を守るために備わっているとても大切な機能です。
そしてHSPの人の体は、常にこの様な反応が起きやすくなっています。
ストレス反応は良い事なのですが、慢性的なストレス状態では交感神経が高い状態が続くと、自律神経の調整が上手くいかずに自律神経失調症になりやすくなります。
HSPの人、愛着形成が上手く取れなかった方は、ストレス耐性が低い傾向にあるので自律神経の乱れが起きやすいです。
自律神経は活動的に動くときに働く交感神経、リラックスや細胞修復の時に働く副交感神経、交感神経を抑制する背側迷走神経、腹側迷走神経があります。
交感神経、副交感神経、迷走神経系がバランスよく働くことにより、体・心の健康が保たれます。
自律神経失調症の症状は1つの人もいれば、複数現れる人もいます。
そして、その症状自体もストレスになり悪循環に至ることで、悩む患者さんも多くいらっしゃいます。
身体症状では、頭痛・めまい・手足のしびれ感・肩コリ・首コリ・背中の痛み・息苦しさなど、多くの症状が現れる事があります。
他にはうつ、気分変調、パニック、強迫症状まで至る事もあります。
では、なぜ慢性的なストレスがあると、このような症状が現れるのでしょうか。
そのメカニズムは、下記のようになっています。
ストレス
→ 交感神経が働く
→ 筋肉の緊張、萎縮
→ 肩こり首コリ
→ 筋肉の緊張が脳はストレスと反応
→ 交感神経が過剰に働く
→ 血流を全身に送る様に発動
→ 筋肉が萎縮しているので血流低下
→ 緊張性頭痛、めまい、手足のしびれ感
→ 生命の危機
→ 交感神経が暴走
→ 脳、内臓に大量に血液を送る
→ 脳が正常に働かなくなる
→ パニック、動悸、強迫症状、過敏性腸症候群などが現れる
ストレスにより交感神経が働くと同時に、神経伝達物質のノルアドレナリンの分泌が促進されます。
ノルアドレナリンは意欲を起こさせます。
ストレスの不安や恐怖という感情を感じさせて、ストレスに勝とうとして積極性や集中力を上げる作用があります。
しかし、慢性的ストレスになるとノルアドレナリンが枯渇してしまい、意欲の低下・集中力低下・物事への関心低下で、うつ傾向になります。
それと同時に、気分を落ち着かせ自律神経を安定させる作用のあるセロトニンの量が減少するので、不安感や落込みが強くなりうつ病になりやすいです。
過敏にストレスを感じることで、上記の様な様々な神経・ホルモン状態が乱れやすく、自律神経失調症や不安・落込み・うつ状態になりやすいのです。
先ほど、「心的外傷により敏感になる人」もいるとお伝えしました。
それは、恐怖体験・不快な体験をしたときに生まれた感情が、脳の扁桃体という感情を司る器官に記憶として残り、その時に体験した感情の記憶と近いストレスを感じると過剰に扁桃体が興奮して、些細なことでも不安や恐怖に襲われてパニック状態になっているのです。