健康豆知識「元気通信」

血流と自律神経

更新日:2012.01.15
執 筆:整体師 鈴木能鷹

血液の流れと自律神経の関係、血液の流れが悪くなるとどうなるのか、その原因はなんなのでしょうか?

血流と自律神経の総論

体の各部は、血液が運んでいる酸素や糖分などを燃料として働いています。
そのため、血液の流れが悪くなり、流れてくる血液の量が減るとそこの部分は上手く働かなくなってしまいます。めまい、耳鳴り、難聴などの症状も耳の内部の血行不良と関係があります。
血流が悪くなると体温は下がり、血流が良くなると体温は上がります。
これらは自律神経の働きによるもので、その働きは内臓にも及んでいます。

主に心臓や肺などの循環器系や呼吸器系は交感神経支配下で働きが活発になり、胃腸を中心とする消化器系は副交感神経支配下で働きが活発になります。

こうした自律神経の支配は、基本的には日中は「交感神経」夜は「副交感神経」が優位に働くというリズムに従って切り替わるようになっています。
しかし、このリズムは絶対的なものではなく、その時々の刺激や行動、精神状態によって臨機応変にその支配が切り替わります。
昼夜逆転などの生活をしていると、それがストレスとなって自律神経のバランスが崩れ、病気をつくりだしてしまいます。

交感神経が過剰に緊張すると、免疫を担う白血球の中の顆粒球が増加します。
すると、増えすぎた顆粒球が死滅するときに発生する大量の活性酸素によって血液を酸化させ、血液がドロドロになり、血行を悪化させ、低体温になります。

低体温の人は交感神経が過緊張になっている危険性が高く、その状態が長く続くとめまい、耳鳴り、肩コリ、腰痛、頭痛、手足のシビレや冷え、食欲不振、不眠症などの症状を招きやすい身体環境をつくりだしてしまいます。
それがうつや自律神経失調症につながるのです。
血行不良や低体温は、自律神経の乱れを知らせるアラームのようなものです。

普段からゆっくりお風呂に入ったり、運動をしたり、食べ物に気を使うなどをして、自律神経をほぐして血行を良くし、体温を上げておくことがストレスに負けない自然治癒力、免疫力の高い体をつくると私は考えています。
以下に血流の詳しい情報を掲載しましたので、ご興味のある方はご参照ください。

血流が悪いとどうなるか?

血流には、さまざまな栄養素や酸素、水分の他、病気から体を守る働きをする白血球や免疫物質が含まれています。
特に白血球には、血液の流れに乗って体内をめぐることにより、体内に細菌や異物などが入り込んでいないかチェックする役割、そして見つけると駆けつけて体を守ろうとする役割があります。
その為、血流が悪いと素早くチェックしたり駆けつけたりすることができず細菌やウィルスに負けてしまいます。
つまり血流が良くなれば、これらの物質による免疫システムもスムーズに働いて病気も治りやすくなるというわけです。

人はお腹や腰などが痛い時、本能的に患部に手を当てそこを温めて血流を良くしようとします。
その行為は、単なる気休めではなく理にかなった治療法だったのです。

血液とは…?

血液は、人間が生きていく為に欠かせないたくさんの働きをしています。
血液は骨の中心部の骨髄で作られます。
骨髄にある造血幹細胞という細胞が分かれて、赤血球、白血球、血小板という血球ができます。

血液は、有形成分の3つの血球(約45%)と、液体成分の血漿(約55%)で構成されています。
血漿の90%は水で、それ以外は主にたんぱく質などです。
たんぱく質中には、液体成分が血管から組織に漏れるのを防いだり、ホルモンなどの物質に結合して運搬する働きをするアルブミン、ウィルスや細菌、真菌、ガン細胞などから体を保護する役割を持つ抗体の免疫グロブリン、出血を止める血液凝固因子などがあります。

血漿にはその他、糖や脂肪、ビタミンなどの栄養素も含まれています。
人間の体は約60兆個もの細胞の働きによって維持されているのですが、この細胞が働くためには常に酸素が必要です。
肺でキャッチした酸素を送り、老廃物となった二酸化炭素を回収する働きをしているのが赤血球です。
そして体内に侵入した細菌やウィルスなどから体を守ってくれるのが白血球です。

出血した時に、血管部分を修復するのが血小板です。
更に、血液は全身を流れることによって体温も調整しています。
つまり、血液がスムーズに流れているということは、全身の細胞が生き生きしていて、体温も安定した状態であるということです。
ちなみに、全身の血液量は体重の約13分の1の量しかありません。
それなのに、体の隅々まで栄養を届け、異常をチェックし健康を支えているのは驚きです。

血管とは…?

血流の良し悪しは血管に大きく影響されます。
血管には、動脈、静脈、毛細血管などがあります。
動脈は心臓から出た血液を末端へ運ぶ血管で、毛細血管は細動脈と細静脈を結ぶ直径5~20ミリの非常に細い網目状の血管です。

静脈は、毛細血管から血液を心臓に送り返す血管です。
動脈や静脈には3層の膜があります(外側から外膜、中膜、内膜)。動脈は中膜の平滑筋という筋肉により伸縮性と弾性に富んでいます。
それに対し静脈にはこの平滑筋が少ないので弾性があまりありません。
そして毛細血管には3つの膜自体がなく、内皮細胞だけです。毛細血管の壁は内皮細胞が横並びになって形作られていて、その隙間を通して血液中と外の細胞や組織との物質交換が行われています(栄養素、酸素、二酸化炭素、老廃物など)。
これを「透過性」といい、透過性が良過ぎると血管内の水分や血液なども毛細血管の外に出てしまい、むくみやじんましん、湿疹や出血が起こりやすくなります。

毛細血管に限らず、動脈や静脈の内皮細胞も血液の循環にとって、非常に重要な働きをしています(種々の血管作動物質を産生、分泌して、血管中膜の平滑筋の収縮、拡張を調整したり、血液を固まらせる作用のある血小板の粘着、凝集を阻止し、血栓を防ぐなど)。

[毛細血管の透過性]
内皮細胞の隙間から栄養素や酸素を外に送り込んだり、老廃物や二酸化炭素を運んだりしています。

血圧

血圧とは、心臓から押し出された血液が血管の内壁を押す力のことをいいます。
上の血圧(最高血圧)は、心臓が収縮して血液を送り出したときの力。
下の血圧(最低血圧)は、心臓が収縮して血液を送り出したあと拡張したときの力のことです。
この最高血圧、最低血圧のどちらかが上がりすぎたり、最高血圧と最低血圧の差が大きくなるほど血管を老化させ硬くしていきます。
血圧の正常値は、成人の場合で最高血圧130~139、最低血圧85~89とされています。
そして高血圧の基準は、最高血圧が140以上、最低血圧が90以上とされています。

高血圧とは、ストレスにより自律神経失調症になり交感神経が過剰に働き続けたり、動脈硬化などが生じて血流が悪くなってしまい、心臓が全身の細胞に酸素や水分、栄養素を送り届けるため、いつも以上に力を入れて無理している状態のことをいいます。
つまり、心臓は血圧を上昇させることによってその働きを遂行しようとしているわけですから、高血圧が良くないからといって降圧剤などでやみくもに下げることには問題があります。
降圧剤の副作用には、うつ(脳の血行不全)や血栓症(心筋梗塞、脳梗塞)、倦怠感などがあります。

血流を悪くする原因

血流を悪くする主な原因は「体の冷え」です。
それは、現代日本人の乱れた生活習慣が招いています。

  1. 運動不足
    戦後(特に1960年以降)、生活が便利になったため、肉体労働が極端に不足して筋力が低下しました。
    体温の40%以上は筋肉で産生されます。
    また、筋肉内には多数の毛細血管が存在するので筋肉を動かす機会が減ると体温は低下し、血流も悪くなります。
  2. 食べ過ぎ
    食べ過ぎは冷えの大きな原因です。食べ過ぎると消化のために血液は胃腸に集中し、産熱量の多い骨格筋、脳、心臓の筋肉をはじめ、胃腸以外の器官や細胞への血液供給量が低下するため、体温は低下してしまいます。
    また、戦後日本人が多く採るようになった肉や卵、牛乳、バター、マヨネーズなどの高脂肪食品は、つい食べ過ぎてしまう傾向にあります。
  3. 水分の摂り過ぎ
    運動をしている人は別ですが、水分を取り過ぎると汗や尿で十分に排泄できない人は体が冷え、血流も悪くなります。
    自律神経失調症やうつの方は体が冷えている方が多い。
    そして血液の流れが悪い方が多い。
    そのため、水分の取りすぎで体を冷やすのは非常によくありません。
    のどが渇く場合はお湯を飲むことをお勧めします。
  4. 塩分の控え過ぎ
    全国的に減塩運動が広まりましたが、塩分には体を温める作用があります。
    塩分を控え過ぎることは、現代日本人の低体温の一因となり代謝と免疫力、血流の低下を招きます。
    また、一部では塩分と高血圧は関係がないとも言われています。
  5. 陰性食品の摂りすぎ
    漢方では陰陽思想に基づき、食材も「陽」=体を温める食べ物(陽性食品)、「陰」=体を冷やす食べ物(陰性食品)と区別しています。
    欧米風の料理、生野菜、南方産の果物などは総て体を冷やす「陰性食品」です。
    また、コーヒーや清涼飲料水なども体を冷やします。
    体が冷えやすいうつや自律神経失調症の方は控える必要があります。
  6. 入浴法が悪い
    特に夏などに湯船に入らずシャワーで済ませる人が多いようです。
    温かいお湯に浸かる入浴は、全身の血流を良くして臓器や細胞の新陳代謝を促進して体温を上げる効果があります。
    また、発汗や排尿を増やすことにより余分な水分も排泄してくれますので湯船には入ることをお勧めします。
  7. エアコンの普及
    体が冷えるといえば、かつては当たり前のように「冬」の現象でした。
    しかし、現在はエアコンの普及に伴い、効き過ぎた冷房による「夏の冷え」を招きました。
    運動不足や水分の摂り過ぎなどで体温は下がっているのに、薄着をして汗もかかない生活をしていれば当然体は冷えます。
    さらに、屋外と室内の温度差があまりにも大きいため、体温を調整する自律神経にも大きな負担がかかり、あらゆる不調を引き起こす要因にもなります。
  8. ストレス
    心臓や内臓、血管、内分泌腺などは人間の意思に関係なく、自動的に自律神経によって調節されています。
    血流もその一つです。
    自律神経には交感神経と副交感神経があり、血管を収縮させて緊張したり、興奮したりするのが交感神経、血管を拡張させてリラックスしたり安静にするのが副交感神経です。
    つまり心身にストレスが加わると、交感神経が優位な状態になります。
    そのため、血管の収縮が起こり血流も悪くなり、冷えの原因になります。
    複雑な人間関係や環境のストレスによって心身の病気を招いています。

血流を良くするには?

入浴

手軽に出来る血管拡張法といえば、お風呂に入ることです。
入浴の効果には、次のような事が挙げられます(38~40度の少しぬるめのお湯に20~30分ゆっくり浸かる)。
温熱による血管拡張作用や、静水圧によるマッサージ効果で血流が良くなり内臓や筋肉などへの酸素供給や栄養補給が増え、疲労回復や病気の予防、改善につながる。
ちなみに体温が一度上昇すると白血球の働きが5~6倍になり、免疫力も5~6倍になります。

また、血栓を溶かす作用のあるプラスミン(酵素)の産生を増やし、アセチルコリン(リラックスホルモン)の分泌が促進され、心身ともにリラックスできますので、うつや自律神経失調症の方はお勧めです。
しかし、非常に疲れを感じるときは入浴することで更に疲労が増しますのでそのような時は無理に入らない方がいいでしょう。

運動

全身の血液循環は心臓が要になって行われていますが、こぶし大の大きさしかない心臓だけでは十分ではありません。
その心臓を助けているのが、筋肉の「ミルキングアクション(乳搾り効果)」と呼ばれる反応です。
筋肉が収縮や弛緩するとき筋肉内を走っている血管も並行して収縮と弛緩を行い、血液をポンプの様に送り返しています。
運動することで血液を送り出すポンプ(足の筋肉)が強くなり、筋肉量が増えて、基礎代謝量が多くなり熱を生みやすい体になります。

足は第二の心臓とも呼ばれていて、全身の筋肉の約7割が下半身に存在するので、特に足を中心に動かしたり、足を温めたりすることが重要です。
普段あまり体を動かさないとこのポンプの力が弱くなり、血行不良になってしまうのです。
体が冷えるとブルブルと震えるのは、体を温めるために筋肉が自然に動く現象です。
運動不足で筋肉が細くなったり、ダイエットなどで新陳代謝が落ちていると熱を生み出す力が弱まってしまいます。
生み出す熱が少なければ、いくら厚着をしても温まりません。
ですから、運動は「温まりやすい体」になるためにはとても効果的なのです。
今まで運動する習慣が無かった人は、ウォーキングから始め、その時間や場所が無い人は、その場でできるスクワットやもも上げ運動などから習慣づけるとよいでしょう。

また、全身の血流を良くするには、腹筋や横隔膜を鍛え、内臓に張りめぐらされている血管を刺激して血流を良くすることも大切です。
横隔膜の運動を高める方法に腹式呼吸があります。
吐く息を意識することで副交感神経の働きを優位にし、心身の緊張が和らぎ、血管も拡張して血流が良くなり、白血球も本来の働きを取り戻して免疫力を上げる効果もあります。

食べ物

食べ物を、体を温める「陽性食品」と、体を冷やす「陰性食品」に分ける考え方はすでにお伝えしましたが、人間の体質もまた、「陽」と「陰」に分けられます。
簡単な見分け方として、陽性体質は筋肉が発達していて、血圧、体温も高く、食欲も旺盛。一方、陰性体質は筋肉が少なく、色白で冷え性、肩コリや頭痛、息切れなどに悩むことが多いといえます。
現代の日本人は、平熱が低い低体温の人が激増していることからもわかるように、多くの人が陰性体質化しているので、体を温めて血流を良くするために、ほとんどの人が陽性食品を毎日しっかり食べる必要があるといえるでしょう。

食品の陰陽を見分ける方法は、植物性/動物性、南方産/北方産、酸っぱい/塩辛い、葉菜/根菜、などがあります。
外見の見分け方としては、色で見分けることができます、「青、白、緑」の食べ物は体を冷やします。
「赤、黒、橙」の食べ物は体を温めます。ただし例外もあり、トマトやカレー、コーヒーなどは、色が濃くても、体を冷やす食べ物に属しています。
つまり、色よりも産地が優先されます「北方産=温める」「南方産=冷やす」。
また、玄米、大豆、芋、アワ、キビ、ヒエ、トウモロコシなど、人類が長年主食にしてきた食べ物は、冷やしも温めもしないので、どんな体質の人でも食べてもよい「間性食品」といえます。